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名古屋高等裁判所 平成7年(ラ)148号 決定 1995年9月06日

抗告人

吉川恵充

右代理人弁護士

打田正俊

打田千恵子

相手方

株式会社ニッセイ

右代表者代表取締役

山口和彦

右代理人弁護士

田島義久

岡慎一

主文

本件抗告を棄却する。

理由

第一  本件抗告の趣旨及びその理由

抗告人の本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消す。本件破産申立てを却下する。手続費用は全部相手方の負担とする。」との裁判を求めるというのであり、その理由は、別紙「抗告状の抗告の理由」、同「平成七年六月二七日付け準備書面(一)、同年八月八日付け準備書面(二)」のとおりである。

第二  当裁判所の判断

一  相手方は、平成七年四月二七日、原審裁判所に対し、債務者株式会社飛騨の里観光(以下単に「債務者」という。)の債務超過ないし支払不能を原因として破産宣告の申立てをしたところ、原審裁判所は、同年六月一五日午前一〇時、債務者は、相手方に対し、五億五〇〇〇万円の債務を負担して支払不能の状態にあることが認められるとして、債務者に対し、破産宣告したところ、債務者の代表取締役である抗告人(同人は、岐阜地方裁判所高山支部平成六年(ヨ)第二号代表取締役職務執行停止代行者選任仮処分申請事件に基づき、同裁判所が同年九月二六日になした決定により、その職務を停止され、職務代行者として、小出良煕が選任されたが、同裁判所は、右事件の保全異議申立事件(同庁平成六年(モ)第六五号)において、平成七年七月二七日、右決定を取り消す旨の決定をした。乙第三二号証参照)は、平成七年六月一五日、破産宣告決定に対する即時抗告の申立てをしたので、債務者についての破産宣告原因の存否について検討することとする。

なお、本件では、原審裁判所が選任した破産管財人が平成七年八月三日付けで上申書及び同年八月二九日付け回答書並びに同添付書類を提出しているが、この点につき、抗告人は、右上申書等は内容的に本件抗告に反対し、破産宣告の維持を主張するものであるから、破産管財人はこのような党派的な行動を採るべきではなく、裁判所もこのような上申書や資料を本件裁判の資料とすべきでないと主張する。しかしながら、破産手続きは、破産者の財産を清算して債権者に対する弁済を図ることを目的とする公的機関による財産整理であることから、破産原因の有無の審理には、職権で必要な調査をすることが認められており(破産法一一〇条二項)、右審理に供し得る証拠価値を有するものであれば、破産管財人が提出したものであっても、裁判所はこれを採用できるものというべきであり、抗告人主張のような制限を受けないものと解するのが相当である。

二  まず、本件記録によれば、次の事実を認めることができる(なお、以下、証拠を注記しない事実は本件記録中の証拠資料によって認定するものである。)。

1  債務者は、昭和四一年五月一二日、風俗営業(料理旅館、キャバレー、ナイトクラブ、その他飲食喫茶など)の経営等を目的として設立された株式会社で、その資本金は、現在、四〇〇〇万円であり、その主たる業務は、岐阜県益田郡下呂町森における「ホテルよし乃」の経営である。

「ホテルよし乃」は、収容人員七〇〇名規模のホテルで、従業員約二五〇名で経営されてきた。

2  債務者の作成に係る財務諸表によると、営業活動(ホテル経営)自体では利益を出してきていたが、多額の借入金をかかえるため、支払利息の負担が大きく、経営全体からみると、慢性赤字に陥っていたところ、債務者が破産宣告を受ける直前の営業年度(平成六年一月一日から同年一二月三一日まで)における営業の損益は、二七二六万九五〇六円の損失であり、その財産状態は、別紙一の貸借対照表のとおりであり、これによると、その総資産額は、三三億三二八七万八六七五円であり、その総負債額は、三一億九四五六万二八二三円であり、資産の点では、一億三八三一万五八五二円の資産超過となっている(乙第一〇号証の決算報告書)。

3  債務者は、右決算報告書に記載のない債務として、平成七年六月一五日現在、左記債務の連帯保証をし、同債務を負担している(公認会計士米澤久二作成の平成七年八月二九日付け調査報告書)。

(一) 五億五〇〇〇万円

これは、関美開発株式会社(以下「関美開発」という。)が、ゴルフ場用地の取得資金として、平成二年八月二二日、センチュリー・リーシング・システム株式会社から、利息年7.63パーセント、損害金年一四パーセントで借り入れた借入金の元本である(最終弁済期平成五年二月二六日)が、後記四のとおり、相手方は、平成七年三月一七日、右センチュリーから債権譲渡を受けている(乙第三四号証の一、二)。

(二) 七億二六七八万三五六一円

これは、関美開発が、ゴルフ場用地の取得資金として、平成二年八月二三日、株式会社東京シティファイナンスから、元金五億五〇〇〇万円を、利息年8.9パーセント(平成四年八月三一日から7.1パーセント・フロート)で借り入れた借入金(最終弁済期平成五年二月二八日)の元利金である(甲第二八、第二九号証)。

(三) 五億七〇〇〇万円

これは、関美開発が、ゴルフ場用地の取得資金として、平成三年六月一九日、伊藤忠商事株式会社から、元金五億円を、利率長期プライムレートプラス一パーセント、損害金年一五パーセントで借り入れた借入金(最終弁済期平成六年三月三一日)の元利金である(乙第三〇号証)。

(四) 一二億五〇四〇万円

これは、富士電業株式会社が、平成元年九月二五日、近畿リース株式会社から借り入れた借入金一〇億円の元利金である(乙第三八号証の一)。

(五) 四四〇万円

これは、株式会社平成電設エンジニアリング(甲第一四号証)が、国民金融公庫から借り入れた借入金である。

三1  本件記録によると、相手方は、平成七年三月一七日、センチュリー・リーシング・システム株式会社から、前記二3(一)の債権の譲渡を受けて(甲第一号証、第二八ないし第三五号証、第三六号証の一、二)、同年四月二七日、営業活動を継続している債務者に対する破産宣告の申立てに及んだものと認められるところ、前記二認定の事実によれば、債務者は、その負担する連帯保証債務を考慮すると、債務超過の状態にあるものと推認できないではないが、債務超過の判定は、単に債務者の貸借対照表上の計数のみに基づいて判断するのではなく、債務者の有する継続企業価値を基準として判断すべきであり、かつ、前記連帯保証債務については、主債務者である借主の財産状況も考慮して、連帯保証人としての負担すべき負債部分を決定した上、これを決するのが相当である。

2  そこで、債務者の資産内容について検討する。

まず、税理士長谷部弘毅作成の平成七年七月一五日付けの債務者の財産評価書(乙第二〇号証)は、前記債務者の平成六年一二月三一日現在の貸借対照表を基礎資料として、これに補正を加えたものであるが、これによると、債務者の資産内容は、別紙二の貸借対照表のとおりとなる。同貸借対照表によれば、平成七年七月一五日現在における債務者の資産総額は、五二億二五九二万九〇〇〇円、同負債総額は三一億九四五六万二〇〇〇円で、二〇億三一三六万七〇〇〇円の資産超過となるが、右評価書は、継続企業価値を基準とするものである(当審における抗告人本人及び長谷部弘毅に対する審尋の結果)けれども、債務者の流動資産については、平成六年一二月三一日現在の帳簿価格に若干の補正を施したにすぎず、これを現実に調査したものではないことが同評価書から認められる。

これに対し、公認会計士米澤久二作成の平成七年八月二九日付け調査報告書によると、同報告書は、債務者が破産宣告を受けた後、その財産状況を現実に調査した結果(ただし、相手先に対する債権債務の残高確認及び棚卸資産の実地棚卸は未実施)に基づき作成されたものであるが、これによると、債務者の資産内容は、別紙三の非常貸借対照表のとおりとなる。同非常貸借対照表によれば、平成七年六月一五日現在における債務者の資産総額は二八億八七九一万九一四五円、同負債総額は三六億〇二五〇万六四六二円で、七億一四五八万七三一七円の資産不足となるところ、その資産評価のうち土地建物に対する評価は、清算価値を基準としたものであることが同報告書の上から明らかである。

以上のとおり、別紙二の貸借対照表及び別紙三の非常貸借対照表には、それぞれ長所、短所があるので、いずれか一方によるのは相当でない。そこで、両者の長所を生かすこととし、資産の部のうち流動資産については、別紙三の非常貸借対照表の評価(ただし、販売用土地については、甲第三七号証は、これを二億七二〇〇万円と、乙第一九号証の一一は、これを三億四〇〇〇万円とそれぞれ評価し、別紙三の非常貸借対照表は前者、別紙二の貸借対照表は後者をそれぞれ採用しているが、ここでは後者を採用することにする。また、別紙三の非常貸借対照表は、開発事業勘定のうち関美開発に対する八億〇八〇一万三三〇七円全額を減額しているが、後記3のとおり右勘定は債務者から関美開発に対する貸金であって、日本長期信用銀行の有する担保価値を通じてこれに見合う価値が確保されているから、別紙二の貸借対照表の評価を採用することとする。)を修正した一四億七四八一万円を、資産の部のうち固定資産については、別紙二の貸借対照表の三六億三九四三万円を、負債の部については、別紙三の非常貸借対照表の三六億〇二五〇万円をそれぞれ採用すると、現時点における債務者の総資産額は五一億一四二四万円、同負債額は三六億〇二五〇万円で、一五億一一七四万円の資産超過になるものと認められる。

3  次に、前記連帯保証債務について検討するに、関美開発を主債務者とする前記二2(一)、(二)の債務については、同会社所有の岐阜県関市所在の土地に対し、各債権者を権利者とする各極度額六億円の根抵当権設定登記が順位第一番で経由されていることが認められ、更に、関美開発を主債務者とする前記二2(三)の債務については、同会社所有の岐阜県関市所在の土地に対し、伊藤忠商事株式会社を権利者とする極度額五億円の根抵当権設定登記が順位第二番で経由されていることが認められる(甲第三号証の一、二、第一八号証、乙第三五号証)。そして、右担保に供せられている関美開発所有の土地には、権利者株式会社日本長期信用銀行、債務者株式会社飛騨の里観光とする極度額一〇億円の根抵当権設定登記が順位二番で経由されている(甲第三号号証一、二、第一八号証)が、これは、債務者が平成三年三月二九日、日本長期信用銀行から一〇億円を借り入れて、これをゴルフ場用地の取得資金として関美開発に貸し付けた担保であって、債務者の借入金一〇億円並びにその未払利息及び遅延損害金三億六三〇〇万円は、別紙三の非常貸借対照表の負債の部の長期借入金並びに未払費用の項に計上されている(公認会計士米澤久二作成の前記調査報告書参照)。なお、関美開発の決算報告書(乙第三五号証)によると、右債務者からの平成七年一月三一日現在の借入金は、八億〇八〇一万三三〇七円と計上されている。

ところで、右担保に供せられている関美開発所有の土地は、帳簿上、取得原価により二七億九三一一万七九七三円と評価されており(乙第三五号証)、この評価を不当であるとする証拠資料もないので(なお、抗告人は、右土地は四〇億程度の売却価値が見込める旨主張するが、これを客観的に認めるに足りる資料はない。)以下これを基に検討するに、前記根抵当権者による権利の実行が各極度額を限度として行われたとしても、その極度額合計二七億円に見合う価値があるものと推認され、この推認を左右するに足りる証拠は存しない。

そうすると、前記二3(一)ないし(三)の債務者の連帯保証債務は、右土地が有する価値によって十分補うことができるものということができ(ただし、株式会社東京シティファイナンスの極度額六億円を超える一億二六七八万三五六一円及び伊藤忠商事株式会社の極度額五億円を超える七〇〇〇万円については、関美開発の他の財産から返済を受けられる可能性はその財産状況から低いものと評価される。)、また、右根抵当権の実行によって生ずる関美開発の債務者に対する求償債権については、債務者の関美開発に対する八億〇八〇一万三三〇七円の貸金債権と相殺勘定の関係にあり、かつ、これについては、日本長期信用銀行の担保を通じてその価値が確保されているから、極度額一〇億円の中では、資産及び負債の部の勘定に変動をきたさない。よって、以上の連帯保証債務の関係では、別紙三の非常貸借対照表の負債の部に、一億九六七八万円の補正を加える必要がある。

次に、主債務者を富士電業株式会社とする前記二2(四)の連帯保証債務についてみるに、同債権者である近畿リース株式会社は、富士電業株式会社の所有する大阪市西区所在の不動産に対し極度額一〇億円の根抵当権設定登記を順位第九番で経由しているが、同不動産には、先順位に極度額合計九億七〇〇〇万円の根抵当権設定登記が経由されており(甲第一八号証)、富士電業株式会社は平成七年六月一九日付けで破産宣告を受けていることを併せ考慮すると、債務者が将来同会社に対して求償権を行使し、自己の出捐分の回収を図ることは著しく困難であるものと推認できるから、近畿リース株式会社に対する債務者の右連帯保証債務は、別紙三の非常貸借対照表上、一二億五〇四〇万円の負債を負うものとして評価し、同貸借対照表の負債の部に同額の補正を加える必要があるものと考える。

なお、主債務者を株式会社平成電設エンジニアリングとする前記二2(五)の連帯保証債務についてみるに、同会社の財産内容は本件全証拠資料によっても明らかでないので、この点についての判断は留保することとする。

4  右2、3によると、債務者の継続企業価値を基準とした資産内容は、現時点において、総資産額五一億一四二四万円、総負債額五〇億四九六八万円で、六〇〇〇万円程度の資産超過が見込まれる。

四1  センチュリー・リーシング・システム株式会社は、平成七年三月一七日、相手方との間に、債権譲渡契約を締結し、前記二2(一)の関美開発に対する貸金債権(元金五億五〇〇〇万円並びにその利息及び遅延損害金の各債権)を代金二億二〇〇〇万円で相手方に譲渡した上、同年四月二二日頃関美開発及び債務者に到達した内容証明郵便でその旨の通知をした(甲第一、第三二、第三四号証)。

そして、相手方は、右債権譲渡通知が債務者に到達する前の同年四月一八日付け内容証明郵便で債務者に対し、五億五〇〇〇万円及びこれに対する平成五年三月二日から支払済まで年一四パーセントの割合による約定遅延損害金の支払を催告し、同郵便は、同年四月一九日、債務者に到達した(甲第三六号証の一、二)。

ところで、右貸金債権は、前記のとおり極度額六億円の根抵当権によって担保されているが、弁済期限である平成五年二月二六日は既に経過しており、更に、関美開発は、ゴルフ場用地取得の目的でこれを借り入れたのであるが、同会社のゴルフ場開発は頓挫しており、かつ、関美開発は、平成七年一月三一日現在、センチュリー・リーシング・システム株式会社に対し、右貸金債権の未払利息等として一三七七万五六一五円を計上していること(乙第三五号証)に照らすと、関美開発が同債務を直ちに弁済すること及び担保物件を処分して返済資金を作ることは現時点で困難であると認められる。なお、抗告人本人は、当審における審尋において、センチュリー・リーシング・システム株式会社と関美開発との間には、右貸金債務につき、ゴルフ場の完成までの間、元本の弁済を猶予する旨の合意が成立していたかのように述べるが、これを客観的に裏付ける足る証拠資料もないので、同供述は採用できない。

2  債務者は、相手方に対する右1の連帯保証債務に加えて、法定納期限平成六年三月三一日とする法人税一二四〇万三三〇〇円、同平成六年二月二八日を期限とする消費税一〇二万二四〇〇円、同年三月三一日を期限とする消費税九六七万九五〇〇円、同年五月三一日を期限とする消費税九〇九万〇二〇〇円、同年八月三一日を期限とする消費税七八五万三八〇〇円、平成七年五月三一日を期限とする消費税六五〇万八五〇〇円、同年八月三一日を期限とする消費税六五〇万八五〇〇円(債務者が破産宣告を受けたため、繰り上げ徴収となったもの)、法定納期限平成七年六月二六日とする固定資産税一五四二万円(債務者が破産宣告を受けたため、繰り上げ徴収となったもの)、法定納期限平成七年五月一五日とする社会保険料二六四万三六〇五円等を滞納しており、このうち債務者が破産宣告を受けたため、繰り上げ徴収となった分を除いても、四九二〇万一三〇五円の租税債務等の納付を遅滞している(破産管財人の平成七年八月三日付け上申書添付書類五)。

3  抗告人は、相手方がセンチュリー・リーシング・システム株式会社から貸金債権を債権額の二分の一以下の二億二〇〇〇万円で買い取って、本件破産宣告の申立てをした理由は、債務者の親会社であった富士電業株式会社が平成五年八月に倒産し、同会社整理をめぐり同社の旧代表取締役であった田中実と旧取締役であった者らとの間に紛争が起こり、同社の旧取締役であった者らが債務者の取締役となっていることから、田中実の側でその方針を支持する相手方が右紛争を有利に導くための牽制手段として本件破産宣告の申立てをしたものであり、かつ、相手方の有する債権も、富士電業株式会社の資金で買い取られた疑いが強く、相手方は単なる名義貸しであり、その実態は富士電業株式会社ないしその債権者委員会であり、更に、相手方においても、真実破産宣告を望んでいるものではないので、本件申立ては申立権の濫用である旨主張する。

本件記録によると、相手方は、債務者に対する破産宣告の申立てをした後、原審裁判所の破産宣告決定がなされる前日まで、原審裁判所に対し、宣告猶予の上申を行い、かつ、債務者に対する破産宣告があった日の翌日である平成七年六月一六日には、抗告人と共に、再度の考案を原審裁判所に申立て、破産宣告決定の取消しを求めるなど、破産宣告の申立てをした債権者として理解し難いような行為に出ていることが認められるが、他方、相手方は、当審において、債務者は債務超過ないし支払不能の状態にあるとして、積極的に破産宣告決定を維持するように求めていることが認められ、更に、富士電業株式会社も、大阪地方裁判所において、平成七年六月一七日に破産宣告を受けたことなどを併せ考えると、相手方が抗告人主張のような意図で行動しているものとは直ちに窺えず、更に、本件全証拠を検討しても、抗告人主張のような事情を確認することはできない。よって申立権の濫用に関する抗告人の主張は採用できない。

五 右四認定の相手方からの貸金債権(元金五億五〇〇〇万円と平成五年三月二日から支払済みまで年一四パーセントの遅延損害金)の履行請求の状況及び債務者の租税債務等の滞納額、前記三に認定の資産状況、特にその資産超過の内容はあくまでも帳簿上のもので、その超過額も六〇〇〇万円程度のものにすぎない上、固定資産については営業継続を前提とする以上、他に売却するなどして債務の弁済に充てることができず、別紙二の貸借対照表及び別紙三の非常貸借対照表のいずれの流動資産の項からみても、右貸金債務及び租税債務等を一時に支払う余裕がないことなどを総合勘案すると、債務者は、破産宣告を受けるまで一回も手形等の不渡りを出したことがなかったとしても、現時点において、支払不能すなわち弁済手段の融通がつかないため一般的継続的に弁済期にある債務を順調に弁済できない状態にあるものと推認せざるを得ず、この推認を覆すに足りる特段の証拠資料はない。

そうすると、原審裁判所が、相手方の申立てに基づき、債務者が支払不能の状態にあるとして、債務者に対し破産宣告したのは正当であって、本件抗告は理由がないものといわなければならないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官塩崎勤 裁判官玉田勝也 裁判官岡本岳)

別紙<省略>

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